【第3回】いざ!挑戦者として全国の舞台へ

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profile第3回 「いざ!挑戦者として全国の舞台へ」

 皆さん、こんにちは!
埼玉県の川口市立青木中学校吹奏楽部で顧問をしている『ナカちゃん』こと、中畑裕太です。

青木中での初めての全日本吹奏楽コンクール全国大会まで、残すところあと1週間となりました。
今回は、目前に迫った全国大会に向けて、指導者としてどのようにバンドを仕上げていこうとしているのかをテーマにお話ししたいと思います。

大舞台を前に立ちはだかった問題

 あと1週間で名古屋の全日本吹奏楽コンクールに出場するわけですが、青木中学校吹奏楽部は本当に奇跡のバンドで、昨年度の県大会銀賞から飛躍的にここまでステップアップすることができました。

でもその分、飛び級してここまで来ている反面、全国までの道のりは長く、大変なものでした。
全国大会という大舞台を前に、3年生が受験との両立で悩み、人間関係の問題がここにきて起こってしまったり、強豪校であれば首をかしげるような問題が出てきてしまったのです。

Still1027_000132年生は2年生で新しい体制として頑張っている日々があるので、3年生は自分たちの代だけど、バンドの現状としては2年生が主体となっているので、少ない人数の3年生が2年生と上手くやるのもなかなか難しいものもあり、一時は全国大会にも出られないくらいバラバラな状態でした。

3年生の中にも温度差があって、遂に「勉強を優先したいから練習に参加できない」というところまで来てしまって。

前任校の吉見町立吉見中学校では、バンドを見始めて4年目に全国大会に出場したのですが、4年間積み上げていたものがあって、1年目から3年目まで毎回どこかで負けて、ようやく掴んだ悲願の全国でした。
でも今年は2年目ということもあり、悲願と言うよりも「全国に行けた」という想いが強く、正直その後、子どもたちのギアが落ちてしまった部分がありました。それは積み上げてきた年月の差なのかもしれません。

今の3年生が2年生の頃に青木中に赴任してきたので、このような問題が出てきた背景には、1年生の頃から見てあげられなかったことがやはり大きいのかなと思っています。どのバンドもあると思うのですが、顧問が変わるということは子どもたちにとってはすごいことで、優秀な先生が来ようが、そうでない先生が来ようが、やはり前の先生の血が流れているので、気持ちが合致という点で苦労があり、なかなか同じ方向を向くこと自体が大変なところがありました。

私は赴任してきてすぐ子どもたちにこう聞いたんですね。「金賞をとりたいか」「夢の舞台に立ってみたいか」と。そうしたら、「立ってみたい」と当時の3年生は言いました。当時の2年生、今の3年生も言いました。
ですが、練習が熾烈を極めていく中で、今までは休みだった時間に休めなくなり、見逃されていたものが見逃されなくなり、叱咤激励が増え、子どもたちは本当に大変だったと思います。
当時の3年生にとっては、新しく顧問が変わって3ヶ月でコンクールですから、無我夢中に頑張った結果、県大会に出場できたわけですが、その後、積み上げていかなければいけなかったのが今の3年生ですから、そういう点ではつらかったことが多かったんじゃないかなと思います。

ただ、やっていく中で金賞をとったり、お客様から温かい拍手をもらったり、本当に楽しいというのはこういうなんだと分かり始めてきてくれたのも手に取るように分かりました。

だからこそ、全国大会にはもちろん行きたい…でも練習ばかりしていて受験は本当に大丈夫なのかと、揺れ動く3年生に伝えたのは「君たちの悔いのない道を選んでほしい。君たちの代なんだから君たちが決めなさい」ということでした。3年生19名が全国大会でどういう最後を飾りたいのか、吹奏楽部としての3年間の集大成ですし、3年間やってきたことの結果なので、自分たちで決めて欲しかったんですね。

そこから色々話し合いを重ね、3年生は朝練のみ参加し、全国大会の2週間前に完全復帰することに決まり、今はようやく少しずつ音も心も練り上がってきた状態なのかなと思います。Still1027_00000

 

満足のできる演奏の準備をする

大会前の残りわずかな時間でできることは、「満足のできる演奏の準備」、これだけですね。
演奏に関しての技術的なことは、そんなに大変なことではないのですが、満足のできる演奏にするためにはいろいろな準備をしなくてはいけないですよね。例えば、このフレーズを吹くための頭の使い方や心の使い方、技術はもちろん、一つ一つもう一度見直して準備していく。その準備を怠らないrために、積み重ねてきた返事や挨拶は徹底したいし、ここで緩めたくないなと思っています。

 私は全国大会に限らず、コンクールは間違いなく課題曲勝負だと思っています。
課題曲に存在する、文字通り『課題』をクリアすること。
どんなパッセージでも音を捨てずに演奏しなければいけないですし、西関東大会を迎えるにあたって、吹くことや音楽を作ることにいっぱいいっぱいになってしまい、音を捨ててしまった部分があったので、もう一度音を捨てずに磨いていくことを徹底していくつもりです。

音……つまりは基礎合奏ですね。
基礎合奏でもう一度音を磨くこと、譜面をもう一度よく見て、リズムや縦を合わせていくこと、それ以上に子どもたちが『こうしたいんだ』という音楽をもっと具現化が出来るように、観客の方にもっと分かりやすいように表現するための約束事を決めたり、約束事が守れなかったら、『何で守れなかったのか』『何で出来なかったのか』という原因を探したり、子どもたちが実力を発揮できるように細かく設定をしていくのが、これからの音楽的な課題かなと思っています。

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 今年の自由曲は、保科洋さん作曲の「復興」です。
全日本吹奏楽コンクールでは部門に限らず、すでに何度も演奏されている名曲で、非常に技巧的な部分と音楽的に歌い込む部分があって、子どもたちには分かりやすい作品だと思い、選びました。

この曲はヤマハ吹奏楽団の創立50周年を記念して作られた委嘱作品ですが、題名が「復興」ですので、東日本大震災の被災者の方々への想いや復興を願う気持ちを子どもたちに話して、この曲のこの部分はこんなシーンで、だからこの後はこんなに歌い込む部分があって感動的なんだよとか、ここはもっと余裕がなく、せっぱ詰まった部分だよとか、そういった情景を子どもたちと共有することができる、素晴らしい作品だなと、やっていて改めて感じました。

「復興」を選んで良かったなと思うのは、子どもたち自身で曲を磨き上げられている実感があるからです。

例えば、オリジナルの過去からあるものや、名演がすでにあるクラシカルな作品だと、どうしても目標やイメージが固まってしまいますが、非常に自由度の高い作品なので、子どもたちが青木中の「復興」はこれだと創り上げられていく様を感じられて、とてもやりがいがありますね。
おそらく一生忘れない思い出に残る作品になるのではないかなと思います。

 

本番に向けたピークの合わせ方

 子どもたちは自分たちで絶対にテンションを上げられる生き物だと思うんです。
それは私たち教員の知らない部分でもあると思います。両親との会話だったり、友達同士で手紙を渡し合ったり、私たちは知らない子どもたちだけのエピソードがありますよね。

そのエピソードが子どもたちのやる気を高めていくんですが、教師はそれとは別に『当たり前のことを当たり前にやる』ことを徹底することが大事かなと思います。
全国大会だから何か特別なことをするわけではなく、日々一生懸命、一つ一つやっていることを改めてやらせる。地に足を着けたことをやらせて、まずは子どもたちが自由にテンションを上げられる場を作るのが指導者の役目だと思っています。

Still1027_00002 あと私自身、全国大会というものすごい行事の前に思うことは、子どもたちと会話することですね。
「どういうふうに演奏したい?」「どんな思いでいる?」とか、演奏でない部分もそうですね。
「3年間どうだった?」「もう全国だね」とか。子どもの思いを聞いて、それに答えようとする。そのための情報収集をしている感じです。

どのバンドも一緒だと思うのですが、全国まで行くと、同時に新しい代がスタートするので、1・2年生に力をかけなければいけない部分って絶対に出てくるんですね。
そうなると3年生としては、なんで1・2年生ばかり…となる。自分が現役の頃も、コンクールが終わって最後の本番前に新体制がスタートして、部長を下の部長に譲って引退を待つばかりの先輩になったときに、後輩に力をかけている先生を見て、嫉妬を感じてしまった部分があって。
だからこそ、なかなか恥ずかしくて本人たちには言えないのですが、全国大会が終わるまでは3年生の代だよ、3年生を見ているよと伝え続けたいという思いがありますね。

おそらく、それが最後にギアをぐっと上げてくれると思いますし、その布石になると思っています。

 

挑戦的な意気込みのある演奏を目指して

 青木中学校吹奏楽部は、本当に昔から強い強豪校ではなく、どこにでもいる普通のバンドです。

だからこそ、全国大会では普通の吹奏楽部がこんなに感動的な音楽を自分たちでしようとしているのか、積み上げてきたものをこういう場で全力でやろうとしているんだな、と感じていただけるような、挑戦的な意気込みのある演奏を見せたいですね。

王道でもないし、ものすごく技術が高いわけでもない。でも初めてだからこそ、初級バンドが2年目だからこそできる、挑戦的な演奏を今年は目指して、全国大会では会場にいる方がこの自由曲をやりたい!と思えるような演奏ができればいいなと思っています。
Still1027_00012コンクール向けた取り組みはジャパンライムさんが密着取材してくれるとのことなので、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います!
やるからには金賞を目指して、頑張っていきます!! 応援よろしくお願い致します。


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■中畑裕太(埼玉県川口市立青木中学校 吹奏楽部顧問)PROFILE
大学時代から外部講師として指導経験を積み、前任校の埼玉県吉見町立吉見中学校で教員1年目から吹奏楽部の顧問に。これまで地区大会で賞をとったことのないバンドをゼロから指導し、就任1年目で地区大会銀賞、2年目に県大会、3年目に西関東大会進出。4年目には2012年全日本吹奏楽コンクールに初出場、金賞獲得という快挙を成し遂げた。

 

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